不器用な彼に恋した私。





恐る恐るチャペルにいる翔さんへ近づく。
すると、翔さんはいきなり“もうすぐ出ます。”と言った。

式場の職員さんと思ったのだろう。
私の顔を見るなり、驚いた表情をみせる。

「井上…。」


翔さんは胸元はだけさせたまま、ぐしゃぐしゃの髪で立ち上がった。
先ほどカッチリしめていたネクタイはピカピカな床にだらんとだらしないくらいに置かれていた。


「翔さん、よかったですね。騙される前で。」

“感謝してください。”
って冗談で言ったのに、下にうつむいた翔さんはすごいまじめな声色で、

“ありがとな。”
って呟いた。


思わずどきゅん。
不意の感謝の言葉に泣きそうになった。


「しかし…、お前があんな風に根性発揮するとはな。」

ポケットに手をつ込んだまま、視線をそらして微笑んだ翔さん。
根性…というか大半、もうヤケクソですからネ。


私はちょっと臭いセリフが浮かんだ。

「まぁ、翔さんを守るためですかね…。
愛はどんな壁でも乗り越えられるんですよ!」

でかした。
ワタシ、えぇ、セリフやないか。(謎のエセ関西弁)


でも、目の前の翔さんの表情は引きつった顔になった。
引きますよね、そうですよね、そんな感じしてましたよ。







「愛って?守るって?」
「えぇっ…!?引かなかったんですか?」


“今、俺が聞いてる”
とまん丸い目が私の目をしっかりと捉える。


でも、それは一瞬だった。
自分が私を凝視しているのを気づいたのだろうか。

プスプスと湯気が出そうなほど真っ赤な顔して口を押えた。



「あぁぁぁぁーーーーー!!!」
そしてついにはしゃがみこんで、顔まで伏せてしまった。



…。
何がそんなに恥ずかしいノデショウカ。







「その…“私の気持ちを知らないくせに”って何?」
籠った声で、話し始める翔さん。


私の気持ち…。


あぁ、あの異議の時に言った…。


ボスっと自分の顔も熱くなった。



「いや…その…」
「言わないなら、別れますが…。」


“好き”

だなんて言えない。
付き合ってるうちに好きになればいいやーみたいな軽く考えていたことがこんなに重かったなんて。
翔さんに出会ってしまったからだ。

出会っちゃったから知っちゃったことだ。









「そ…その…」

“好き”
と言おうとしたその時。


私のお腹の音が盛大にチャペルに響いた。
ギュルルルルルル…って。


可愛くないお腹の音が。


翔さん、びっくりして大きなくりくりな目をこちらに向ける。



“ブフッッッ!!”
ついには噴出した翔さんは、爆笑。
もう、静寂がトラウマになりそう。