不器用な彼に恋した私。

「ソレデハ誓約ヲシテイタダキマス。
皆様、Stand up please。ゴ起立クダサイ。」

英語が混ざったまま、その時がきた。
潤さん、向かい側の席の優子さんスタイルで“頑張れ”と長い脚の方で握りこぶしを作っている。
深く息を吸い込んだ。


「翔サントユイカサンハ…now。
今結婚シヨウトシテイマス。コノwedding…ンンッ。
結婚ニセートーナ理由デ異議ノアル方ハ今申シ出テクダサイ。
異議ガナケレバ今後何モ言ッテハナリマセン。」


私は手をゆっくりと上げた。



「異議があります!!異議あり!!」



私、言える!!
てか、腹いせだ!!ここでストレス解消しよう!!
なんて悪いことを考えながら、新婦が歩いていたバージンロードに、仁王立ち。
翔さんは驚いて、大きな目をくりくりにした。


周りは当然の如く、騒ぎ立て始める。



「静粛に。では、まず、お二人のご結婚に異議があります。」
神父、私のその姿に恐ろしさを感じたのだろう。
OH…と若干腰が抜けている。


「まず最初に。
恥ずかしながら、翔さんと私は現在交際中です。
しかし、ちゃんとした別れ話もしていません。
それはどうでしょうか、翔さん。」

「それは…」


「私はまだ“別れる”とも何とも言っていません。
私の気持ちを知らないくせに、中途半端な別れを告げないでください。」


翔さんは黙り込んでしまった。
そして、痛いほどに睨みつける純白の腹黒いユイカさんに近づく。


「ちょっと井上!!」
「二宮。」


“ん?どした…”
そんな控えめな声に私は言った。


「後で飲みに行こうね。」
「よっしゃ、奢りな!」





「シゴ禁止デス。」

神父も控えめがちに震える声で言った。
よし、あとで飲みに行ける。あとでお酒で忘れればいい。

そう考えた私は、優さんに貰ったテープレコーダーを突き上げる。


「もうユイカさん…、三度目の正直で本当の正体がばれてしまうとはね…。」
「藍…ちゃん…何を言ってるの?」


「翔さんを守りに来ました。」



“再生”のボタンを押した。
チャペルに響き渡るのは、ユイカさんの通話内容。


―――― 私、三度目もちょちょいのちょいで金奪えそうだわ。


周りの列席者はざわついた。