不器用な彼に恋した私。

「クレームってなんですか。」


前と同じ会議室で、睨みを利かせ尋ねた。
睨んだ私を避けるように翔さんは視線を逸らした。




「クレームなんて嘘だ。クレームを利用して話したいことがある。」


あぁ、ちゃんとしたお別れを業務内にするのね。
これで残業になったら翔さんのせいじゃん。
とか、思いながら、揺れることのない瞳を見つめた。



「ちゃんとした別れ方というものがある。
俺達はここで、ばっさりと、上司と部下だけの関係に戻る。」





なんだ。
1年弱か。

長かったじゃん。


「別れましょう。」
「話が早い。そう、これでいいんだ。」











――――という妄想を悶々としていた。
結局、呼び出された理由は別れ話じゃなくて本当にクレームで、クレーム処理に私は追われた。
目まぐるしいそのクレーム処理にボーっとしている脳内は、翔さんのことばかり。


“大丈夫?さっき泣いてたけど。”
と同じ部署内の人に声をかけられる。

その答えに
“大丈夫です”
とこたえるのも嫌気がさす。



社員食堂。久しぶりにカコと来たけど。
不機嫌な表情を浮かべる。







「電話、取らなかっただろう。」
「スマホ、パゲてね。お亡くなりになっちゃった。」


カコは、あぁ、そう。と言いながらナポリタンを食べる。
珍しい、いつもなら日替わりランチのはずなのに。


私は今日はお弁当持参していないから、ジュースだけ。
というか、胃が食べ物を受け付けない。


「あのさ、話したいことたくさんあったのに、そのパゲた理由はさ。」
「落とした。」


「だろうね。」

モグモグ。
頬を動かしながらナポリタンを堪能する。


珍しい、いつもなら日替わりランチのはずなのに。





「で、泣いた理由は?」
「え?」


「さっきよ、さっき。
派遣社員の子が挨拶したその直後かそのくらいに泣いてたジャン。アンタ。」


そうだっけ?とモグモグし続けるカコを見つめた。


珍しい、いつもなら日替わりランチのはずなのに。


「どうせ、派遣社員の子でしょ。あの子気をつけたほうがいい。」
「あの秋田美人の派遣社員の子がどうしたの?」



「お仕事男子の元彼女。」



・・・はっ?






マジで!?と尋ねた私に“会社内で有名になりつつあるよ”と冷めた口調で返したカコはナポリタン。


珍しい、いつもなら日替わりランチのはずなのに。