不器用な彼に恋した私。





午前2時頃。
ボーっと止まらない涙を流しながら、ずっと缶ビールを飲む。
初めて来た二宮の家で。
人を呼びたくないらしいけど、なぜか入れてくれた。


秒針の音がやけに響く部屋。
お喋りな二宮も黙る。

二宮はいつも、ゲームの話をするのにね。
攻略がどうのこうの、あの鈴木ちゃんといつもゲームしてるとか。
いろんな話を聞く。





やっと二宮が口を開いた。
午前2時45分。


「お仕事男子・・・となにかあった?
んん?今日だけ特別にニノちゃん聞いちゃうよー?」

いつもの二宮節、発揮。
“うわー、明日は浮腫みっぱなしのフグだわ。笑”
って余計な一言も含めて。





「浮腫みっぱなしのフグで悪かったわね・・・。ぐしゅっ!!」
「わー、汚ねっ。ほら、チーンだ。鼻セレブでチーンしろ。」


え、倹約家の二宮が?
って思ったけど、差し出したのはあの少しお高い鼻セレブ。


・・・こういうところに金使うんかい!!





そう思ってたら、少し気持ちが軽くなった。
二宮はそういうところが尊敬できるよ。
空気読んで、重い空気を軽くするように無理してオチャラける。
そういう技術が私もあればいいのに。










重い口を開いた。









「・・・無かったことにしていいって。」
「んん?えぇ?」




もう、一回で聞けよ。




「付き合ってたこと、無かったことにしていいって。」
“もしや。”と薄い唇に手を添えた二宮は妙に鋭い。


「俺がつけた痕跡キスマークで?」

コクンと頷いた私に“マジか”と声を漏らした二宮。
二宮は、缶ビールを一口飲み乾すと、涙が止まらない私を抱きしめた。


「・・・ごめん。」


子どもっぽい指が今朝みたいに髪を梳く。
左手が私の頭をポンポンと撫でる。








「でも・・・、俺なら?泣かせることなんてしねぇよ?」
腕をゆっくりと解いた二宮は、色素の薄い瞳でまっすぐと見つめる。
何一つ揺れない。恐れも、後悔の色も無い。


「ねぇ、戦友路線から、俺、脱線できない?」







「ずっとこの路線は走れない。
“コイビト”路線に変更できない?俺?」

肩をガシリと掴む二宮。
冗談をいうような表情じゃない。
ずっと仕事を共にしてきたから、知ってる。


でも・・・。

まっすぐ見つめる二宮から視線を逸らした。
逸らした瞬間。肩のぬくもりは消えていた。