桜の花が咲くころに

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「俺の好きだった人は、はじめは別の人を見ていたんだ。」

そう海人が呟くと切なく微笑んだ。

「別の奴を好きだって気づいていても、俺は、好きになる気持ちを抑えることは出来なかった。」

「その人とは…どうなったの?その気持ち…伝えたの?」

私の問いに海人は少し間を置くと、瞳をソッと閉じた。

「……伝えたよ。」

その人とどうなったか…それは口にしなかったけど、それだからこそ余計に海人のその人への想いが強かったことが伝わってくる。

ギシッ……
私の身体の真ん中…心が音をたてる。

「………今…その人とは?」

「その人は遠くに行くことになって、会えなくなったんだ。だから…」

そういうと海人はゆっくりと立ち上がって私の手を取った。

「もっと伝えておけば良かったと後悔する前に、今度好きになる人が現れたら、すぐに行動しようって決めてたんだ。」