桜の花が咲くころに


橘くんは、ほとんど聞き取れないくらいの声で呟いた。

そしてもう一度…


「王子じゃないよ、桜。俺は…海人だよ…。」


そう言うと、橘くんの表情はいつもの笑顔に戻っていた。


「あのね、傷ついてないっていうのは、桜のことを好きじゃないからって言うわけじゃなくて、振られても諦めるつもりがないから、そこまで傷ついてないんだよ。

絶対に俺のこと好きになって貰えるように頑張るつもりだからね。」



は?

何その理由!!

私が橘くんのこと、絶対に好きになると思ってるの?



「もし…私が王子のこと好きにならなかったら?」


「………好きになるまで頑張るのみ。」


「私が他の人を好きになって、その人と付き合ったら、どうするの?」


「もし他に好きな人が出来て、その人と付き合ったなら、別れるまで待つ。」


「はぁ?ちょっと王子!それストーカーだから!!」


「桜…桜は俺のこと…王子じゃなくて、海人って呼んでくれない?」