桜の花が咲くころに


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千草のせいで…というべきか、千草のおかげで…というべきか、


【無理なのよ】


王子を好きになっても無理…入学式はその事ばかりが頭の中をまわり、本来だったら絶対に寝てしまいそうな校長先生や来賓客の長い挨拶の際も、バッチリ起きていた。

ただ…その挨拶の内容を覚えているか…と言われたら、そんなはずはなく…寝ていても起きていても大差ないのだけれど。


前の方に座っている橘くんの後ろ姿に視線を移す。

全然眠そうな素振りも見せず、スッと背筋を伸ばして座っている姿は、後ろ姿なのにカッコイイ。



何で彼は、私の前で泣いたのか。


何で彼を、好きになっても無理なのか。


何で私は、朝からずっと彼のことで悩んでいるのか。





「…………ぁぁ…もうダメ…。」


誰にも聞こえない程小さな声で呟いた。


普段こんなに考えることが無いから、頭がパンクしそうだわ。

入学式が終わったら、千草に聞けば良いだけなのに、何をこんなにグルグル悩んでいるのかしら…。


そう割り切ろうとしても、考えを止めることは出来ずに、式の間中考え、全く内容が入って来ない入学式は、永遠のように長く感じた。