「杉本さん、窓側か通路側かどっちがいい?」

「あ、じゃあ窓側で!」

隣には吉村くんが座ることになった。
学校でも隣の席だが、やっぱりバスの席は距離が近くて緊張する。

「よし、全員乗ったな。着くまでにだいたい3時間くらいかかるから、まぁ適当に過ごしといてくれ。あ、途中でトイレ休憩もあるからな。」

3時間の間、どうしよう。
とりあえず何か話題を考えないと。
さすがに無言のままでは気まずい。

「……もとさん、…杉本さん、おーい聞いてる?」

「え、ご、ごめん何?」

何か話題を考えないとと思い必死になっていて、周りの声が聞こえていなかった。

「大丈夫?ちょっと顔色悪いけど…酔った?」

「うーん、そうかも。一応、酔い止め飲んでおこうかな。」

いつもなら乗り物酔いなど滅多にしないが、緊張のせいで少し気持ち悪くなってしまったのかもしれない。

「……家に置いてきたかも。」

家の机の上に酔い止め薬を置きっぱなしにして来てしまった。
やっぱり持ち物確認は前日やらないといけない。

「まじか……あ、でもトイレ休憩の時に近くにコンビニがあるはずだから、そこで買えるはず!」

「あ、そうだね!あと1時間半か…」

「起きてると酔うでしょ?寝てたら?」

「うん、ごめんね、そうするね。」