「結愛、ごめんね、また断れなくて。」

本当は断りたかった。
でも、やっぱり怖かった。
もし断ったら何を言われるんだろう、と考えるとできなかった。

「ううん、全然平気だよ!それよりさ、次の授業って確か修学旅行の班決めだったよね?」

「あ!そういえばそうだったね。」

来週には高校生活最後のイベントが待ち構えている。
二泊三日の修学旅行だ。
もちろん楽しみだが、一つ不満がある。
男女各3人ずつ、計6人の班で行動しなければならないということだ。
せめて男女別々の班が良かった。

「よし、班決めするか!とりあえず、男女各3人ずつの6人班な。ま、あとは適当にお前達でやってくれ。」

相川先生。
私達の担任の先生だ。
普段は厳しい先生だけど、こういう時はある程度の自由は与えてくれる。
生徒達のことを真剣に考えてくれる、とてもいい先生だ。

「ひーちゃん、どうする?」

とりあえず、私と結愛。
あと1人女子は誰を誘おうか。

「ねぇねぇ、篠原さん達さ、俺たちと一緒の班になろーよ。」

やっぱりね、来ると思った。
結愛が目的のチャラ男3人組。
こんなやつらと同じ班なんて絶対に嫌だ。

「いや、あの……」

早く、早く断らないと。
わかってるのに、声が、出ない。
やっぱり、怖い。

「あーごめん。俺らの方が先に杉本さん達のこと誘ってたからさ、他のとこあたってくれない?」

突然後ろから声がした。
隣の席の吉村柚希くんだ。

「はぁー!?柚希も狙ってたのかよ!」

「は?何をだよ。まぁとりあえずわかったら早く違う人のとこ行って。」

一瞬、何が起きたのかわからなかった。

「ごめん、勝手なことして。なんか困ってるみたいだったから、つい。余計なお世話…だった?」

「えっ、そ、そんなことないよ!ねぇ、結愛?」

「うん!私、あの人達苦手だからすごく助かった!」

びっくりした。
やっぱり、男子と話すのは苦手だ。
とても緊張する。

「そっか、良かった。じゃあ俺たちと一緒の班でOKってことでいいかな?」

「うん、私はそれでいいよ!ひーちゃんは?」

「あ、うん、私も大丈夫だよ。」

良かった。
さっきのチャラ男達よりも全然ましだ。
それに、吉村くんは級長をやっていてとても頼りになる。

「とりあえず、男子は決定か。女子はあと1人どうする?」

「うーん…」

結愛とばかり一緒にいたから、特別よく話したりする友達が少なかった。
でも、1人だけ、結愛以外に毎日話す人がいる。

「瑞希、誘ってみていい?」

「あ、いいね!ひーちゃんと仲いいから私も仲良くなりたいなーって思ってたんだ!」

日比野瑞希。
同じ美化委員だ。
とてもフレンドリーで話しやすいので、人見知りの私でも、すぐに仲良くなることができた。
それに、私と同じスポーツ観戦好きで、とても趣味が合う。

「日比野と仲良かったんだ!意外だなぁ。」

「そ、そうかな?あ、じゃあ誘ってくるね!」

やっぱり、男子と話すのは緊張する。