独り占めしてもいいですか…?【完】

千景が私の代わりに傘を持ってくれると、雨の中へ飛び出した。





歩いているうちになんとかこの距離感にも慣れ、平常心を取り戻しつつあった。





「千景、肩濡れてるよ?もっと自分のほうに傘差しなよっ」





私のほうばっかに傘傾けて、結局千景が濡れてるよ!

その気遣い嬉しいけど、千景が濡れちゃったら私が嫌だし。





「俺は男だからこんくらい大丈夫だよ。それに傘忘れたのは俺だし」





そう言って笑顔をみせていた。





「…じゃあ、お言葉に甘えるね」





やっぱり千景は優しいな。

誰にでも平等に…優しいもん、ね。





この優しさが私だけに向けられてたらな…

なんて一瞬でも思ってしまった自分を戒めたい。





千景はみんなに優しいことくらいよくわかってる。





千景が優しくしてくれるみんなの内の一人でいい。





独り占めしたい…だなんて高望みはしない。





だからこの気持ち、千景にバレないように、必死に隠さないといけない…っ。





千景に私の気持ちがバレたりでもしたら、今までみたいにこうやって一緒に帰ることさえできなくなるのかもしれない。





それが私にとって、何よりも一番怖かった。





「美生?暗い顔してどうした?」


「えっ?…って、ち、千景…!」


「ん?」





千景の方へと振り向くと、千景の顔が私の目の前にあったのだ。





突然の千景のドアップに、動揺を隠せなかった。