「龍星っ」
雅之に呼ばれて、龍星は我に返った。
屋敷の中というのに辺り一面、白い霞がかかっている。
……幻霧(げんむ)か
巻き込まれた人に幻を見せ、その心を惑わせる白く濃い霧だ。
目の前にはもう妖狐の姿はなく、律が呆けて座りこんでいた。
「毬は?」
龍星は声がした方に目をやる。
「消えた。霧が立ちこめてきたから手を掴もうとしたんだが……」
雅之の辛そうな発言に、龍星は頭を抑えた。
失態だ。
あのキツネの罠にまんまとはまってしまったのだ。
龍星は瞳を閉じて、神経を集中させた。
何の迷いもなく、印を結び、呪を唱える。
龍星の気合いの入った声が響き、辺り一面はゆっくりと晴れ渡った。
「毬っ」
龍星は急いで屋敷から出ると、庭の隅に倒れている毬を見つけ抱き上げた。
真っ青な唇。
硬く閉じた瞼。
「やあ龍星。なんの騒ぎ?」
予想外の声に弾かれて顔をあげる。
「……帝」
驚きの声を上げたのは、雅之の方が早かった。
雅之に呼ばれて、龍星は我に返った。
屋敷の中というのに辺り一面、白い霞がかかっている。
……幻霧(げんむ)か
巻き込まれた人に幻を見せ、その心を惑わせる白く濃い霧だ。
目の前にはもう妖狐の姿はなく、律が呆けて座りこんでいた。
「毬は?」
龍星は声がした方に目をやる。
「消えた。霧が立ちこめてきたから手を掴もうとしたんだが……」
雅之の辛そうな発言に、龍星は頭を抑えた。
失態だ。
あのキツネの罠にまんまとはまってしまったのだ。
龍星は瞳を閉じて、神経を集中させた。
何の迷いもなく、印を結び、呪を唱える。
龍星の気合いの入った声が響き、辺り一面はゆっくりと晴れ渡った。
「毬っ」
龍星は急いで屋敷から出ると、庭の隅に倒れている毬を見つけ抱き上げた。
真っ青な唇。
硬く閉じた瞼。
「やあ龍星。なんの騒ぎ?」
予想外の声に弾かれて顔をあげる。
「……帝」
驚きの声を上げたのは、雅之の方が早かった。


