初めての甘い恋人

「このあと、食事でもどうかな?」

「え?」


あっ…。この人にしたら食事の誘いなんて深い意味はないんだろうな。

私、仁の事があったからか、男性に対する壁が分厚くなった気がする…。


「いえ……遠慮させていただきます」

「え?いいじゃない」

「どうして、私なんですか?あなたなら、他にもいっぱいいるでしょ」

「キミがいいんだ。……初めてなんだ。こんな気持ち」


へぇーーー。何か、仁もそんな事言ってたな……

結局違ったけど…。


「とりあえず、行かないので」


私はそう言って足早にスタジオに戻った。

そのあと撮影中は何も言ってこなかったけど、事務所に戻っている途中、ビルのエントランスで会った。


「食事、どうしてもダメ?」

そう言いながらついてくる。甘えた様なまた違う印象だ。

振り返り、もう一度ちゃんと断ろうとすると、護さんの後ろの方に、今一番会いたくなかった人を見つけてしまった…。しかも、女性と一緒だ……。腕まで組まれている。

なんだ…仁。やっぱり彼女いたのね。


そう思い、仁を見ていると彼も私に気づいた。