薬指、空けとけよ


「そうだっ、バイト!バイトいっぱいして、会いに行くから」

「……、由里香」

「他には、えっと、」

「由里香」

「っ洋平、あのね、」

「――もう、黙ってて」


さっきまで抱きついていたはずなのに、今は抱きしめられてた。
苦しくなるくらいに洋平の腕の力は強い。

それだけで涙は更に溢れた。

好きだよ、洋平。大好きだよ。
離れたくない。ずっと、傍にいたい。


けたたましい音量の音楽がホームに響いて、それを合図に洋平は私を離した。
バックを掛け直して、近くの乗り口に向かう。

列車に乗り込んだ洋平が、ドアのところでこちらに振り向いた。


「迎えに来るから」

「、え?」

「迎えに来るよ」

「っ、」

「だから、待ってて。」

「ようへ、」