「――なんで?」

「え、?」

「なんで、来ちゃったの?」


もう一度こちらに顔を向けた洋平を見たら、止まったはずの涙は自然と溢れた。


ぶっきらぼうなクセして優しくて、不器用なのに誰より他人思いで。
クラスの人気者で。本人はそんなこと気付いてなくて。

口悪くて毒舌ばっかり吐いてる洋平が、あの洋平が、

洋平が、泣いてる。


「俺には思いつかなかった」

「、」

「由里香を守る方法が、思いつかなかったんだっ…」


由里香を、縛り付けたくなかった。

そう言って静かに涙を流す洋平に、私は思わず抱きついた。
抱きしめたっていうより、ほんとに抱きついたって言った方が正しい勢いだった。

ホームには、列車が発車することを告げるアナウンスが響いている。


私達はまだ高校生だから、子どもだから。
この状況をどうすることもできない。

行きたくない、なんて言えないし。

行かないで、なんて言いたくない。


「メール、するからっ」

「……」

「電話も、いっぱいするから!」

「、……」