そこからは簡単だった。 いつもの家が 火と煙で包まれていた。 赤色の車が2台、 柱だけの家に水を注いでいる。 夜なのに明るかった。 夜なのに騒がしかった。 「ありさちゃん、落ち着いて聞いてね」 近所のおばちゃんが駆け寄ってきて 何か言っていたが聞こえなかった。 「疲れたろ」 疲れたよ。 「俺んちおいで」 冷たく突き刺さる目、 けれど あたしを闇から引き上げてくれたその手は とっても暖かかった。