「浅井さん」
「…なに」
「好きです、」
彼女がやっとその表情を崩す。
微かに目が見開かれたのが分かる。
「本当に好きです。…心から、好き」
「、」
ダムが決壊したみたいに、俺の口は動き始めた。
こんな駅の構内で告白するなんてどうかしてるって、そのことに気付いたのはだいぶ後のことだ。
この時の俺はただ彼女に気持ちを伝えたくて、知ってほしくて。
それ以外のことなんかこれっぽっちも考えてなかった。
「ずっと考えてた。浅井さんが俺の相手をするはずなんてないから、この思いも無駄だって」
「……、」
「あのキスは自分の妄想だと思ってた。そんなことが現実にあるはずないから」
「あれ、はっ」
彼女の表情がどんどん崩れていく。
マドンナの皮を被った女の人から、幼い少女が現れたようだった。
彼女が困惑したような仕草を俺に見せる。
「告白されてるのだって、俺には飛び出す勇気がなかったんだ。恐かった」
「っ、」
「本当は浅井さんが話し掛けてくれるようになってかなり浮かれてたし、その笑顔を独り占めしたいって思ってた」
「なっ…」


