「もしもしー、俺だけど!有希子、今どこにいんのー?」


コンビニ内に裕樹の声が響く。

電話の相手は、――


「え?南口?分かった分かったー。いや?なんでもないけど」


この人は普通にいい人なんだと思う。

会ったのは今日で二度目だ。

そんな俺にこんなに親切にしてくれるこの人はただのお人よしなのか、それとも単に彼女を思ってなのか。


今は別にそんなのどうでもいい。

ただ本当に、今日裕樹に会って良かったと心から思う。

じゃないと俺は、彼女の気持ちを知らずに逃げ続けただろう。


「…ありがとう」


そう言った俺に裕樹はウィンクする。

早く行けって、電話を持ってない方の手で出入り口を指す。


俺はもう一度お礼を言ってコンビニを出た。

駅がある方向へ、鈍足を引きずって駆け出す。



会いたいと思った、あの女の子に。

しばらく声を聞いてないあの子と、話がしたいと思った。


次は俺から、俺から話し掛けるんだ。

聞きたいことがたくさんある。

それ以上に、伝えたいことがある。


顔しかめられても黙ってなんかやらない。

俺は好きなんだ、浅井有希子が。

マドンナなんかじゃない。

浅井有希子が、好きなんだ。