目の前には見たことのない男が1人。
誰だかは分からない。
だけどそれにしてもこの人、男の俺が見ても、……格好いい。
「あ、やっぱり有希子だ!まじ、久しぶり」
彼女のことを“有希子”って呼ぶその人。
それだけで、2人が親しい間柄だって分かる。
「えっと…、もしかして、裕樹?」
「そうそう!中学ぶりじゃね!?」
彼女も、彼のことを下の名前で呼んだ。
今高校で、彼女が男子を下の名前で呼ぶところは見たことがない。
俺は1人、立ちすくんでた。
ついていけない。
目の前の人を、茫然と見つめる。
なんでこの人は俺と同じ黒髪なのに、どうしてこんなにも違うんだろう。
全く野暮ったさを感じさせない、その姿。
彼が着こなす藍色のカーディガンはきっと、どこかの誰かさんみたいに昨日慌てて買ったものとかじゃないんだろう。
そんなことを情けなく思ったのは、心のどこかで気付いてたんだと思う。
この人は、他の人と違うって。
マドンナの、近い位置にいる人だって。
2人が並ぶと、驚くほど様になる。
俺がこの場にいることが恥ずかしいと思うくらいに、様になる。
「わー、やっぱ高校離れるとなかなか会わないもんだな!」
「そうだね。高校違うとね」
「また集まろうって話してんだよ!有希子も来るっしょ?またメールするわ!」


