「こんなんでいいかな?」


なんでこんなことになってんだって、俺は神様に問いたい。

神様は飴と鞭の使い方が、たいそう上手いらしい。


「いいと思うよ」


そして、緊張を外に出さずにちゃんと会話できている自分自身を褒めてやりたい。

よく頑張ってる。俺。



あれから俺は、しばらく呆然としていた。

自分が何のためにここに来たのかも忘れて、それはもう情けない放心状態だった。

動けない。


だって、マドンナに好きな人がいるだって?

誰だよ、そいつ。どんな奴だよって思う前に、正直終わったと思った。


あんなに柔らかい笑みを俺は見たことがない。

好きな相手を優しいと評した時の彼女は、それはもう美しかった。

そんなにその人が好きなんだなって分かるくらい、全身からその思いが溢れてた。


それほどに、何とも言えない表情だったんだ。


終わったって、そりゃ誰だって思うよ。

彼女をあんな笑顔にさせる誰かが、確かにいるんだ。

そんなの、いくらなんでも、ね?

放心状態にでもなってしまうでしょうが。