「あのねっ、春樹くん。わたし、学校だと美香とか美香ちゃんって呼ばれてるんだけど、春樹くんにはミッカーって呼んでほしいの」
そう言うと、春樹くんは不思議そうな顔をして、ミッカ?と暗唱した。
「そう!わたしの変身した姿、天才戦隊・赤レンジャー。その名もミッカー!
えっとねえ…、このお面を付けるとお、変身できるんだよ?」
わたしはカバンの中をガサゴソと漁ると、先程も出したお面を取って、春樹くんに見せた。
これは、先月有った夏祭りで買ってもらった物で、わたしは専らこれで戦隊ごっこをするのにハマっていた。
けれど、周りの女の子でそんな遊びにハマっている子はいなくて、最近は少し気持ちを持て余していた所だったのだ。
「わたしが赤レンジャーっていう事は、皆には秘密なんだけど、春樹くんには教えるね?」
わたしはこっそりと春樹くんに耳打ちすると、春樹くんは嬉々として、「分かった!ミッカね。僕そう呼ぶ」と言ってくれた。
細かいことを言えば、ミッカじゃなくて、ミッカーなんだけど、わたしは秘密を共有出来る事が嬉しくて、「うんうん」と何度も頷いた。
「じゃあ、僕の事もハルって呼んで?」
その後、春樹くんはそう言って首を傾げた。
わたしは呼び捨てで呼び合える事が嬉しくて、「分かった」と元気よく返事した。

