困った顔をする春樹くんをほっとけなくて、解決方法を一生懸命考えた。


「じゃあ、春樹くんの家の前で遊ぶのは?
そうすれば、お母さんも心配しないし大丈夫だよ」


そして、わたしは名案だとばかりにそう言った。
そうすると、春樹くんはふわりと笑って頷いた。


「良かったら、美香ちゃんに僕のお家来て欲しいな」


「良いの?」


春樹くんがした提案を、前のめりで返事をする。
すると、春樹くんが「もちろんだよ」と言ってくれたので、嬉しくてわたしは思わず笑顔になった。


この出会ったばかりの男の子、春樹くんともっともっとお話したかったのだ。



歩く間、わたしは春樹くんに尋ねた。

「春樹くんは、どうして引っ越してきたの?」


それに、春樹くんは「それはー…」と言いにくそうに俯いた後、


「僕のお母さんとお父さんがお別れしちゃったからかな」


と言った。春樹くんは、今にも泣き出しそうな顔をしていたのに、幼いわたしはその意味がさっぱり分からなくて、


「春樹くんのパパとママ、どうしてお別れしちゃったの?」


と聞いた。今だったらどんなに無神経か分かるけど、その時は何のことだか理解できなかったのだ。


春樹くんは、わたしの言葉に「それは僕も分かんないや」と困った様に言うと、えへへと笑った。


幼な心にも春樹くんが困っているっていうことが、この時は分かって、わたしは直ぐに違う話題を出した。