退社時刻ちょっと過ぎた頃、巧からメール。

『これからご飯行ってくるね!明日はどこで待ち合わせする?』

明日は土曜日。
一緒にライブに行くのだ。

『おつかれさま、いってらっしゃい!明日はどこでも良いよ。何時にする?』

『おつかれさま、じゃぁ新宿に3時でどうかな?』

『了解!あ、私も会社の人とご飯行くね。』

『あ、そうなんだ?誰?わかったー』

最後は返さなかった。

基本的にいつも小一時間残業がある。

多部さんに頼まれていた資料も作り終えメール完了!っとそこにチャットがくる。

『30分後に銀座駅の三越の前で』

ちらっと見ると今度は目が合ったので
軽くうなずく。

すぐに、パソコンをおとしタイムカードを切り退社。

「おつかれさまでした!」

ちゃっかり多部さんも
「おつかれさま」と返してくる。

会社のトイレで化粧直しをして
銀座線に乗り着いたら10分前。

多部さんが5分遅れてきた。

「ごめんね、遅れた」
「いえいえ、大丈夫ですよ」

多部さんおすすめのちょっと高級な和食のお店。
「予約した多部です」

【え!?予約してくれてたんだ。】
この時点で、巧との違い。
あ、多部さんもう38歳か、大人だもんなぁと思いながら席に通される。

多部さんが適当に頼んでくれた料理と
ビールと私のカクテルが運ばれてくる。

「じゃぁとりあえず乾杯かな」

「はい、乾杯ですね」


少し仕事の話をしていると

「篠山さん、彼氏いるんだっけ?」

「いますよーまだ付き合ったばっかですけどね」

巧とは土日はほとんど一緒だし、目撃されてもめんどくさいのでもう付き合ってることにしている。

「へー、いーな、ラブラブなの?」

「まぁ、そこそこですかね」

「多部さんは?奥さんとはどうなんですか?」

「まぁ、うちはもうラブラブはないね。愛も家族愛だね」

「結婚するとやっぱりそうなるんですかねー?」

「なるね、絶対なるね、あぁ、ドキドキしたいよ」

「えー、やだなぁ、私はずっとドキドキしてる夫婦になりたいです」

「お、結婚するの?」

「いや、まだしませんけど!!」


プライベートな話をするのは初めてなのに
毎日仕事で関わってるからなのか
自然と話が進む。。お酒も。。
そして楽しい自分に驚いている。


「篠山さん、メアド聞いても大丈夫かな?」

「あ、いいですよー」

特に何も考えず交換し今日はお開きとなった。


帰り道
早速多部さんからメールがきた。

『今日はありがとう、楽しかったよ。また誘ったらダメかな?』

『こちらこそ、ごちそうさまでした。私も楽しかったです。また行きましょう』

これがダメだった。