「ばっかみたい」

今年こそはみんなでお祝いできると期待して。

「ばか・・・みたい」

ここの所ずっと、浮ついた気分で過ごして、帰りにケーキを買って。プレゼントだって準備して。

「ほんとに、ばかみたいじゃない・・・」

傍目から見ても、紫音が今日の夜を待ちどうしく思っていることが分かるくらいだったのだ。

こうなるなどと、予想なんてしていなかったのだ。
なんて、滑稽なんだろう。

視界に映る、ポインセチアの赤色が眩い。

唇を噛んで、抑えていた涙がとうとう零れた。

後を追うように次から次へと零れていく。

クリスマスを恨んで、うらんで、やっと今年こそは好きになれると思ったのに。

毎年どうしても、クリスマスは両親の仕事が忙しくなってしまうから。

だからわざわざ、休みをとってもらったのに・・・。

やっと、やっと、お父さんとお母さんと、クリスマスを過ごせるいや、誕生日を当日に祝ってもらえると、期待したのに。

やっぱり、子供より仕事をとるんだね・・・

物が散乱している室内に、お札が二枚置いてある。

謝罪のつもりなのだろうが、それが更に少女の心を抉ることに、普段ほとんど少女と接しない両親は気づかない。

だけど、来年こそはきっと、と、少女はまた期待を抱えて眠る。

その腫れた目を見るものは誰も居ないことには、まだ気づけない。