・
翌日。
キャンセルのメッセージはすぐに来た。
改善されなかった天気が悪くても会いたいと思う俺は、何かしらの理由を考えては文字に起こしていた。
“美味しいタンドリーチキンのお店が…”
かと言って、食事また誘うのはワンパターン。
“好きな本を紹介したい…”
最近本読んでないし。
“自分の家にきてほしい…”
もう下心出てるし。
…とにかく迷った末に巡り会えた答えは。
“料理を教えてほしい。”
自然な流れで会えるように誘えたし、あわよくば、彼女に触れられるかもしれない。
って、俺は下心丸出しの猿かよ。
皐月:いいですよ。
どちらの家にしますか?
本当は、俺の家と言いたいところ。
だけど、下心丸出しの猿など思われたくない。
内田:俊君と一緒に伺います。
「俊、今日俊ん家行ってもいい?」
俊は指先で頬を掻くと笑みを浮かべた。
「いいよ。ただ、俺、まだ仕事あるから、先に家に行っててくれる?
ウチの皐月もいると思うし。」
心の中で小さくガッツポーズ。
少しの時間、二人っきりでいられるって事だからだ。
でも、浮かれるなと言わんばかりのマツの視線はとてもと言えるほど痛かった。
トイレに行けば、そっと耳打ちしたマツ。
“浮かれるな、早まるな、誤解するな。
時に現実見る事も必要ですからね。”
分かってるよ。
でも今更嫌いにもなれないだろう?
マツだってそれなりに恋愛してきたろ?
もう深い闇にはまってしまえば、簡単には抜け出せないんだよ。
・
今日の皐月さんはちょっとだけ攻めすぎていた。
細い首元丸出しのノースリーブ型の短いワンピース。
まだまだ残暑が残っている今日この頃。
指先のワインレッドに目がチカチカする。
「悠人さん、いらっしゃい。」
「ああ、お邪魔します。」
やっべー…。
足細、綺麗だし。
胸元、綺麗だし。
「これ、亜麻仁油なんだけど。
認知症予防になるくらい健康に良いから、どんなものでもかけて食べてみて。」
受け取る爪、綺麗だし。
キラキラした瞳、綺麗だし。
内心、パニクってる事知らねぇだろうな。
・
有り難う御座います、と受け取った皐月さんは、うーんと悩みだした。
「どうしたの?」
「今日の料理、何にしようかなって迷ってるんです。」
悩み方も可愛い、ぎゅっと胸を鷲掴みする皐月さんは。
あっ、とまた思い出したように俺に料理の提案をした。
「最近覚えた料理なので私も不安なんですけど。
ビーフストロガノフのキャベツ包み冬野菜のラタトゥイユ添えなんてどうですか?」
俊を意識してなのだろう。
俊のメンバーカラーである真っ赤なエプロン。
でも真っ赤なエプロンが似合ってしまうのが皐月さんだ。
スマートフォンの料理の写真を見せた皐月さんは微笑んだ。
今にも触れそうなくらい、近いのに、皐月さんは全然ドキドキしてくれない。
俺は、こんなに余裕ないのによ…。
「いいね、それ作ろう。」
皐月さんはスマホをホーム画面に戻す。
見る気はなかった。
でも、その壁紙に驚いてしまった。
「…壁紙。」
俺の声に反応した皐月さんの手の中からスマホが滑り落ちた。
白い肌が真っ赤に染まる。
壁紙が俺だった優越感が半端なく、俺を襲う。
「…本当のことを言うと、私、悠人さんに憧れていて。
一度は料理してみたいな、なんて思ってたけど、こんな機会がやってくるなんて思わなくて。」
この綺麗な見た目で俺を憧れてるなんて。
「本気で嬉しいだけど…」
ぱっと表情が明るくなった皐月さんは、スマホをまた拾うとうれしそうに笑った。
「悠人さんのソロの『affection』好きですよ。」
「俊、俺が担当ってこと知ってるの?」
言えるわけない、と言わんばかりに顔を振った皐月さんが可愛すぎて。
この時間が一生続けばいいのに、そう願ったのに。
噂をしたとき、噂の本人が来るというのは本当かもしれない。
「おー。悠人、いらっしゃい。」
俊が秋物のコートを脱ぎながら、白い歯見せて笑った。
翌日。
キャンセルのメッセージはすぐに来た。
改善されなかった天気が悪くても会いたいと思う俺は、何かしらの理由を考えては文字に起こしていた。
“美味しいタンドリーチキンのお店が…”
かと言って、食事また誘うのはワンパターン。
“好きな本を紹介したい…”
最近本読んでないし。
“自分の家にきてほしい…”
もう下心出てるし。
…とにかく迷った末に巡り会えた答えは。
“料理を教えてほしい。”
自然な流れで会えるように誘えたし、あわよくば、彼女に触れられるかもしれない。
って、俺は下心丸出しの猿かよ。
皐月:いいですよ。
どちらの家にしますか?
本当は、俺の家と言いたいところ。
だけど、下心丸出しの猿など思われたくない。
内田:俊君と一緒に伺います。
「俊、今日俊ん家行ってもいい?」
俊は指先で頬を掻くと笑みを浮かべた。
「いいよ。ただ、俺、まだ仕事あるから、先に家に行っててくれる?
ウチの皐月もいると思うし。」
心の中で小さくガッツポーズ。
少しの時間、二人っきりでいられるって事だからだ。
でも、浮かれるなと言わんばかりのマツの視線はとてもと言えるほど痛かった。
トイレに行けば、そっと耳打ちしたマツ。
“浮かれるな、早まるな、誤解するな。
時に現実見る事も必要ですからね。”
分かってるよ。
でも今更嫌いにもなれないだろう?
マツだってそれなりに恋愛してきたろ?
もう深い闇にはまってしまえば、簡単には抜け出せないんだよ。
・
今日の皐月さんはちょっとだけ攻めすぎていた。
細い首元丸出しのノースリーブ型の短いワンピース。
まだまだ残暑が残っている今日この頃。
指先のワインレッドに目がチカチカする。
「悠人さん、いらっしゃい。」
「ああ、お邪魔します。」
やっべー…。
足細、綺麗だし。
胸元、綺麗だし。
「これ、亜麻仁油なんだけど。
認知症予防になるくらい健康に良いから、どんなものでもかけて食べてみて。」
受け取る爪、綺麗だし。
キラキラした瞳、綺麗だし。
内心、パニクってる事知らねぇだろうな。
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有り難う御座います、と受け取った皐月さんは、うーんと悩みだした。
「どうしたの?」
「今日の料理、何にしようかなって迷ってるんです。」
悩み方も可愛い、ぎゅっと胸を鷲掴みする皐月さんは。
あっ、とまた思い出したように俺に料理の提案をした。
「最近覚えた料理なので私も不安なんですけど。
ビーフストロガノフのキャベツ包み冬野菜のラタトゥイユ添えなんてどうですか?」
俊を意識してなのだろう。
俊のメンバーカラーである真っ赤なエプロン。
でも真っ赤なエプロンが似合ってしまうのが皐月さんだ。
スマートフォンの料理の写真を見せた皐月さんは微笑んだ。
今にも触れそうなくらい、近いのに、皐月さんは全然ドキドキしてくれない。
俺は、こんなに余裕ないのによ…。
「いいね、それ作ろう。」
皐月さんはスマホをホーム画面に戻す。
見る気はなかった。
でも、その壁紙に驚いてしまった。
「…壁紙。」
俺の声に反応した皐月さんの手の中からスマホが滑り落ちた。
白い肌が真っ赤に染まる。
壁紙が俺だった優越感が半端なく、俺を襲う。
「…本当のことを言うと、私、悠人さんに憧れていて。
一度は料理してみたいな、なんて思ってたけど、こんな機会がやってくるなんて思わなくて。」
この綺麗な見た目で俺を憧れてるなんて。
「本気で嬉しいだけど…」
ぱっと表情が明るくなった皐月さんは、スマホをまた拾うとうれしそうに笑った。
「悠人さんのソロの『affection』好きですよ。」
「俊、俺が担当ってこと知ってるの?」
言えるわけない、と言わんばかりに顔を振った皐月さんが可愛すぎて。
この時間が一生続けばいいのに、そう願ったのに。
噂をしたとき、噂の本人が来るというのは本当かもしれない。
「おー。悠人、いらっしゃい。」
俊が秋物のコートを脱ぎながら、白い歯見せて笑った。

