じゃあ、初キスで


「だって斗真、今彼女いるでしょ?私といたら嫌われちゃうよ。」




「……やっぱお前、勘違いしてるだろ。彼女葵って思ってんだろ?違うから。」





嘘だ





だって、彼女でもない人とキスなんて、普通しない



したとしても、私の知ってる斗真はそんなことしない




「……嘘、つかないでよ。」




「は?ついてないし。そんな嘘ついて俺になんの得があるわけ?」




いくら寒くて溶けないって言っても、ずっと食べてなかったら変形するアイス




ぐちゃぁって歪んだその形は、今の私の心の中みたいだ。




嫉妬とか、純粋に応援したい気持ちとか、知りたいけど知りたくない複雑な気持ちとか




「キス、してるの見た。」




「あ、あれは……告白されて、断って。そしたら急に、その……」




斗真はもうアイスを食べ終わったみたいで、ぐちゃぁってなったアイスを凝視している私を凝視している。




「……」




「なぁ、理央。」







嫌だ







今は斗真の声を聞きたくない。