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「楽しかった!また行こーね。」
カラオケが終わってみんな解散して、俺は葵と2人で帰ることになった。
家が近いわけではないんだけど、葵はバスで帰るからそこまで一緒なだけ
「おう!」
正直言うと、理央のことが気になって全然楽しめなかった。
理央は昔から強がりだから、1人で寝込んでるかもしれない
熱はなさそうだったけど、もしかしたらどこかでのたれ死んでるかもしれない
理央がそんなに弱い奴だとは思わなかったけど、それでも心配だった。
理央のことは昔から放っておけなかった。
喧嘩なんか俺よりも強かったし、体も大きかった
けど人一倍強がりで泣き虫で、俺は弱かったくせに心のどこかで「俺が守るんだ」みたいな気持ちがあった。
その時から、好きだったのかもしれない。
はっきり自覚したのは中学に入ってからだったけど、あいつはそれぐらいから急にモテだして
『理央って、よく見ると美人だよな。』
『俺狙ってみよっかなぁ。』
そんな会話が近くで聞こえるたびに俺がどれだけヒヤヒヤしたと思ってんだよ
自分だけが好きなのもよく分かってた。


