君の背中はずっと遠くて。

テニス部って部活辛くて長いイメージだけど、今日は早いのかな・・・。
サボってきちゃったとか言ったらどうしよ・・・。
なんて考えながら階段を早足で上る。

ガララッ
扉の開く音。今日も退屈な1日がはじまる。
頑張ろうか、と心に決めて、前を向くと、もう既に先生が教卓にいた。
「おはようございます、結城さん」
「おはようございます」

正直、鈍い私でもわかるくらい担任の後藤先生はイケメンだし、声もかなりいい。だからクラスの女子にモテるのだ。
相手を傷つけない断り方?がキュンとするとかー・・・。
私的には、立場が違うのになんで告白するのか謎だ。

一時限目はホームルーム。
一番眠くなる先生の話・・・。

それを思うと朝ゆったりと話をするこの時間を与えてくれていることに感謝したくなる。とはいえ、私に話す相手などいないし、最低限の会話で済ましちゃう私だから・・・。泣けてくるね。

「ちょっと」
「あ、どうかしました?」
後ろの席の男の子に声をかけられた。確かこの人は中学校から一緒なんだっけ?
喧嘩っ早くて問題児な印象が、今ではクール系になっている。
いや、そう見えるだけか・・・?四月はもっと騒がしかった気がする。

「聞きたいことがあるんだけどさ」
「なんでしょう?」
「あのさ、恋・・・したことある?」
「はい?」
咄嗟に机に貼られた名札を見る。
恋愛事情を気にするこの女子力高め男子・・・だれだっけ?

「中村・・・晴登?」
思わず声にしてしまった。
「呼び捨てかよ」
そう言って笑った。

「いやぁさ、クラスで話題だからさ。いろんな人の恋愛事情が」
「はぁ・・・」
「どうしてお前かって?前にいたから。からかっただけ。気にすんな」