拝啓、花の小瓶へ。


夕暮れの教室。
和馬が出て行って、すぐ帰ってきた。

ドアを開けたその顔は泣き出しそうな程歪んでいて、ああ、と誰もが思えるだろう。

「…おかえり」

「フラれた」

「見ればわかるよ」

「悠…俺泣きそう」

「そんなに好きだったの、珍しいね」

「冷めてんなー…慰めろよ」

「頑張ったね、おつかれ」

「つら…ほんとお疲れだよ」

止めたよ?俺

早すぎるでしょって言ったじゃん

好きって友達に伝えて、すぐ告白って…

まあどれ位好きだったかなんて俺は知らないけど。



「あれー、まだ残ってんじゃん!帰んないのー?」

ふと教室の扉が開かれて、あー誰だっけ…ギャル風の子が入ってくる。

「俺、今傷心中…ほっといて…」

真っ赤になった目を隠して和馬が言った。

「えー、なになに?怒られた?」

「違う…フラれた…」

言っちゃっていいのか?悔しさが帰ってきたらしく机をばんばん叩きだした。それ俺の机。


「フラれて腹立ってんの?よくわかんないわー、好きなんでしょ?」

「誰が好きな子に腹立つかよ…自分に立ってんの!」

「怒んないでよ!誰にフラれたの?あ、私?」

「少なくともお前じゃない…ほっとけって…」

「えー。ばいばい悠君、和馬。すぐ帰んなよ!」

和馬がひらひらと手を振る。俺も振っておいた。

「…って、言ってたけど和馬?帰らないの?」

かえる、と呟きながらも顔をあげようとしないので、鞄を持って席を立つ。

「待って置いてくな!待て!」

興味ないふりをしながらも、俺は春川さんが和馬をフったのを疑問に思っていた。

優しくて人気者で、顔もまあいい和馬。

それなりにモテてきた筈だったし、彼からの告白を断ったのはあの子が初めてだし。