「ひじりー、安静にしてなさいよ~」
「んー」
あたしの部屋に顔をのぞかせに来たお母さんが心配そうに声をかける。
熱が徐々に上がってきたみたいで、応えるのも辛くなってきた。
だから声だけで返事をした。
「ごめんね、こんな時に家を留守にするなんて」
いつの間にかそばに来たお母さんがあたしの頭をなでる。
う、そんな悲しそうな顔しないでよ~。
謝るのはあたしの方だっていうのに。
「いーのいーの。毎年恒例なんでしょ?お父さんとのクリスマスデート」
「そ、そうだけど……」
「こんなのどーってことないって」
「そお?」
「うん。だから気にしないで楽しんできて!」
そう言ってあげると、納得いかないような難しい表情をみせてから、ふわっといつもの笑顔を浮かべた。
そうそう。あたしが見たいのはその顔だよ、お母さん。
お母さんがドアの向こうに消えた後、車のエンジン音を聞いたのを合図に、ゆっくり体を起こさせた。



