【柊!来なくていい!】
震える手を動かして送ったのに対し、返ってきた返事は即答で。
【あ、もう着いたわ】
と非常にシンプルな一文が表示されていた。
それをがく然と見て、窓から少し顔を覗かせると今度はめまいがした。
「っ、本当に来たよ……」
そして家中にベルが鳴り響く。
この部屋から出たくないけど、なんとかその重い足を動かして、玄関へ向かった。
ドアノブをひねると明かりが家の中に射し込んだ。
そして大きく開けるとPコートを羽織ったシンプルでかつオシャレな格好をしたイケメンが立っていた。
……やっぱり柊はかっこいい。
こんな人があたしの彼氏だなんて、ほんと自慢だよ。
「……い、いらっしゃい。ケホッケホッ」
やば、咳が出はじめちゃった。
ついさっきまで大丈夫だったのに。
「あー、先上あがってて。飲み物取ってくるから」
「いや、いいよ。そんなことやんなくて」
柊は気を遣って言ったんだろうけど、とうに熱で頭が麻痺したあたしは急に怒りだしていた。
「なによ!せっかく人が親切に飲み物取ってくるって言ったのに!」
ちがう、こんなこと言いたいんじゃなくて。
「……聖?」
首を傾げる彼にあたしは睨みつけた。
「もういい!勝手にすれば!?」
そう言うと後悔と罪悪感が一斉に襲った。
ちがうよ。言いたいのはこんな言葉じゃない。
それなのに、怒りは治まらなくて。
柊の横を通り過ぎようとした時。
視界が歪んで、そのまま横に倒れた。



