中学2年生の4月のことだった。
私たち5人と、桑原弥生(くわばらやよい)は同じクラスになった。

『堤さんごめん、教科書忘れたから見せてくれない?』

中学2年生になって初めての授業が始まってすぐ、弥生は私にそう声をかけてきた。

『うん、いいよ』

それが私と弥生の初めての会話だった。
弥生は髪が長く黒のストレートヘアで、幼さを感じさせる顔をしていた。
彼女は人当たりも良く話も合い、席も隣同士だったので私たちはすぐに仲良くなった。

”かな”

彼女は私のことをそう呼んでいた。
私も彼女を”弥生”と呼び、それからは二人で行動することが多くなった。

そんな私たちの間に亀裂が入ったのは、中学2年生の9月半ば。
夏休みが終わってすぐあとの一大行事である、修学旅行でのことだった。

私たち6人がはじめて集まったのが、修学旅行の班決めの時だった。
旅行中に行動する5人以上の班を作らなくてはならないときに、声をかけてくれたのは睦だった。

『私たちと一緒の班にならない?』

睦の言葉に私と弥生は同意した。
睦以外に、彩女、京華、みちるがすでに班に加わっていた。
彩女、睦はクラスの中でも目立つタイプで、自分と正反対の彼女たちとはじめは馴染めずにいたが、話してみると意外と話しやすく、気づけば普通に話せるようになっていた。

そして修学旅行1日目の夜。
私たちは部屋の中心に輪をつくり、修学旅行の夜恒例の恋バナが始まった。