事の始まりは"彼女"が亡くなったことだった。

私、堤香苗(つつみかなえ)は現在大学2年生の夏休みで、毎日暇をもて余していた。
そんな9月はじめの深夜2時。

まだ夏の陽気が残り、寝苦しく蒸し暑い毎日が続いているそんな日々に、その知らせは私のもとへ突然舞い降りた。







ーーーリリリリリ…

私が自分の部屋のベッドでくつろいでいると、携帯の着信音が鳴り響く。

こんな夜中に誰だろう?

画面には"重森京華(しげもりきょうか)"と表示されている。
京華って、あの京華?

重森京華は中学、高校時代の同級生の名前でその頃は仲が良かったが、大学がばらばらになりそれから連絡を取っていない。
そんな京華から約1年半ぶりに、しかも電話がかかってくるなんて予想もしていなかった。

もしかして間違え電話かもしれないと思いもしたが、一向に切れる気配もなく、どうやらそうではないらしい。
私は鳴りはじめてしばらく経ってから、何故電話をかけてきたのか予想できないまま通話ボタンを押す。

「もしもし」

私はたどたどしい口調で電話に出る。

『久しぶり、香苗』

その声は昔と変わらない低めのハスキーボイスで、高校の頃を思いだし懐かしい気持ちになる。

「久しぶり京華。突然電話してきたから驚いたよ」

『そりゃそうだよね。高校卒業以来だし』

京華はクールな性格で、何事に対してもさっぱりしている。
反対に私は気が弱く頼まれたら断れない性格で、そんな彼女が羨ましかった。
もっと断らなきゃ駄目だよといつも言われていたっけ。

「それで電話してきたのって、何か用事?」

『うん…言いづらいんだけどさ』

彼女は本題に入ろうとすると急に言葉を詰まらす。