母と二人で話をしていると父が現れた。


「おぉー!凛…綺麗だよ。私の大切な女性が二人ともこんなに美しいと、気が気じゃないな…。」

「何を言っているんですか!お父様…。」


父の言葉に少し顔を赤くして恥ずかしがりながら父に抗議している母を見て、とても微笑ましく思う。


ホントにこの両親の間に生まれてよかった…。


「凛、パーティーでは、凛にとって大事なこともあるから、楽しみにしてなさい」

「お父様!言ってはダメじゃないですか!」


ん?私にとって大事なことってなんだろう…。


「凛、お父様の言ったことは気にしないで」


気にするなと言われても…。気になってしまう。でも、会場に着いたらそんなこと吹き飛んでしまっていた。


千人規模の大ホールにところ狭しと人がいる。それだけでも気おくれしそうなのに、チラチラと視線を感じ、居心地が悪い…。すると、父が言った。


「凛、私から離れるんじゃないよ」


こんなにたくさんの人がいるところで、父から離れる勇気はない。


秀人はまだ来てないのかなと、その姿を探してキョロキョロしていると会場が暗転した。