「突然だけど、聞いてくれる?」

「はい」

「俺は……凛が好きだ」

「えっ……?」

「今思えば、一目惚れだったんだと思う。君が凛って名前と同じように、凛とした仕事に対する姿勢を遠くから見て、最初は綺麗な人だなって……いつしか、自分でも無意識のうちに凛を視界にいれていた。……今すぐ返事がほしいわけじゃないんだ。でも、俺が凛の事を好きだと、大切にしたい相手だということは分かっていてほしくて……凛の心に俺とは違う他の誰かがいるのは、なんとなく分かってるよ……」

「……えっ?」

「だてに何年も凛を見てないからね」


そう言われて、私の頭の中に一人の男性の顔が浮かび、伊織さんにはその人が誰なのか分かっている気がして、急に恥ずかしくなった。きっと私の顔は今、真っ赤だろう。


「そんな顔をさせる、秀人が羨ましいよ」

はっとして、伊織さんの顔を見ると、少し切なそうな瞳で私を見ていた。


「秀人は俺の弟なんだ。俺たちが幼い頃に両親が離婚したから、一緒に暮らした時間は短いけどね」


驚きすぎて声が出ない……。


「隠し事は嫌いだから、また驚かせるだろうけど他の人から聞くより、俺が言いたいから……もうひとついい?」


もう、何を聞いても驚かない様な気がする。それだけ、伊織さんと秀人くんが兄弟という事実は私にとって衝撃だった。


「はい。どうぞ」


静かに伊織さんの言葉を待つ。