さがしものが見つからない

6月。

私の大嫌いな行事が始まった。

何週間も前から、その地獄は私を苦しめる。

「アリス、大丈夫?」

愁眉に歪む顔で私に声をかけるのは春香だ。
私は、イライラMAXで押し黙っていた口をゆっくりと開いた。

「もう、最悪・・・」

私はサッカー用のグランドのベンチに座り込む。
その横に春香も座り、苦笑いを浮かべた。

隣の陸上トラックでは、生徒たちの歓声やら黄色い声援がこだましていた。

「だから、嫌なんだよな。体育祭って」

「まぁ、みんなわいわいできるから楽しいんだよ」

「春香はいいの? 私に付き合わせてるなら」

「いいの。アリスと一緒にいたいし」

春香はにこにことご機嫌な笑みを浮かべる。
私は、「ならいいんだけど」と呟いて、バカ騒ぎする連中を遠目に見ていた。

「春香、綱引きって何時?」

「んーとね。あ、あと15分くらいかな」

「じゃあ、そろそろ戻らないといけないな」

またあの盛大な爆音ノイズの中に入るかと思うと反吐が出そう。
綱引きを選択はしたものの、簡単にできるものなら何でも良かった。

走るの嫌いだし、数人で息のあった何かするのは嫌いだ。
だったら、と選んでは見たがここまで応援がうるさいとは。

あと学年5クラスもあるから、軍で合わせたらもうずっと耳を塞いでいたいほどのノイズの嵐。
マイクで呼びかける教師の声なんかまるで耳に入らない。

それでもやっと静かになると、手を上げろとの指示が出た。
なぜかその瞬間は、みんな押し黙る。

そんなに静かにできるなら、いつもそうしてくれてしてくれればいいのに。

気分が乗らないまま私はだらりと手をあげる。
遠くで掛け声がする。
そして、スターターピストルの乾いた音が始まりを告げた。