さがしものが見つからない

人は誰しも、後悔というものを多かれ少なかれ、大小に関わらずするだろう。

あの時、こうしていたらとか。
あの時、あんなことしなければとか。

すぐに忘れてしまうものもあれば、ずっと心の奥底に残るものもある。


私の場合、ずっとというわけではない。
けれど、タチの悪い過去は、時折ふとした拍子に脳裏に蘇って、私の心をあの頃に縛り付ける。


まるで、忘れるなというように。



「アリス」


ふと声をかけられて、声の方に視線を向ける。
ふんわりと無邪気に笑うのは、高校に入ってから知り合った風見春香(かざみはるか)だ。

「アリス、駅前に美味しいパフェがあるんだって! 放課後行かない?」

「いいよ」

「っやったー!」

嬉しそうにはしゃぐ姿に、思わず笑みが漏れる。
私にはない子供っぽいというか、女らしい魅力を惜しむことのない春香は、男子からの人気が高い。

ただ、元々のフレンドリーさが勝り、男女ともに良好な関係を保っているらしい。

誰に対しても柔軟に対応して話す姿は、いつ見ても、すごいと思う。

「なんかね、抹茶とクランベリーの組み合わせが1番美味しいんだって」

「へー、知らなかったな」

「他にもいろいろあるみたいだから、アリスは見てから決めるといいよ」

「そうする」

ちょうどその時、SHR開始を告げるチャイムが教室に響き渡る。
春香は、軽く手を振って自分の席へと戻る。

私は、1番前の窓際から2番目の席で、教室に入ってくる担任の顔を見上げる。

号令がかけられ、挨拶すると、担任が今日の連絡事項を述べていく。

これが終わればいつも通りの授業という名の拷問がやってくる。

げんなりとしながらも机に伏せるのは、1番前の席では叶わない。

家から近く進学コースのあるこの高校を選んだため、偏差値について詳しく考えなかった。
入って見て驚いたのは、進学コースという割には名ばかりだったという事実だ。

学校自体はまだ荒れてはいない。
ただ、落ち着きのない生徒は山ほどいる。
授業中の私語は当たり前、教師への敬意のかけらのないタメ語、教師の指示なんてそっちのけ。

これでよく、学校が成り立ってるな〜と、最初こそは思ったが、人間なれるとどうでもよくなるらしい。

それでも、生徒に対して寛容な教師には、みんな和気藹々としながら食い入るように話に耳を傾けるからおかしなものだ。

そして、今日も爆音ノイズは鳴り止まない。