狼狽え戸惑う警備員のおじさんに真部さんが、


「怪しい人間に見えるなら、さっさと通報すればいい。大丈夫でしょう。人を見る目はあるつもりです」


「わ、わかりました。では」


渋々、見なかったことにと、帽子を目深に被って通してくれた。


そしてようやく真部さんに付いて、中に入ることができた。


「あっ、ありがとう……あ~~~っ!!!!」


「今度は何だ」


行きなり言葉尻が砕ける。


目の前のこれも特注らしいお洒落な柱時計が、13時15分を指していた。


「あのっ!!あのっ!!図々しいのは百も承知の上でお願いがあります!!エレベーターはどこですか!?」


間抜けすぎるそんな言葉を発してしまったのも、きょろきょろと見渡しても、それがどこにあるのかも分からなかったからだ。


「来い」


手を掴まれて、引っ張られた。


―――暖かい手だ。
いや、感動してる場合か。