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―――そして。
紹介していただいた先での、私の仕事も落ち着いてきた半月後。
相手の方も忙しい方らしく、なかなか時間が取れずようやく都合がついたらしい。
都心の裏路地にある小料理店で夕食に招かれた私たち。
「こんな綺麗なところで大丈夫!?お母さん」
「だだだ、大丈夫!!!きっと」
一応2人とも、万が一のために唯一正装として着物は誂えてあったので、お母さんに着付けてもらった。
それで正解だった。
小ぢんまりしているとはいえ、格式高そうな佇まいは、リクルートスーツやら迂闊な格好では入れない店構えだ。
けれどやはり親子だ。血は争えない。入る勇気がなく、前で固まる。
何より風が冷たく寒い。
「なぜ中でお待ちにならないのですか!?」
声を掛けられ振り向く。
「真部さん!!」
「えっ真部??!!……さん!!??って」
そういえば名前も聞いていなかった。
紳士の胸元には確かにセンスのいい棒タイが掛かっていた。
ターコイズのベースに、カメオの薔薇を模したデザインだ。
そして、オーダーメイドのスーツ姿が絵になっていた。