耳まで赤くなると、
「とと、とんでもないっ!!ただのお友だちよっ!!」
「やだ、お母さん、かわいい…」
「親をからかわないの!!ほら、お母さん、デパートでお仕事してるでしょう??」
駅前のデパートの紳士服売り場でパートをしていた。
着付けと販売士の資格を持っているお母さんは、デパートでも重宝されていた。
「先月だったか、珍しく棒タイを探しに見えたお客様がいて」
「今どき棒タイって、珍しいね??」
ファッション雑誌ですら見掛けることもない。紐状のネクタイだ。丸や四角の大きめのボタンで留める。
手頃な価格のものであれば、事務のおじさんが袖カバーとセットで愛用しているイメージだ。
「たまたま在庫が倉庫にあって、見繕ってお見せしたらセンスがいいって言われちゃって」
「へえ…」
恋する乙女だ。
お母さんもこんな顔するんだな。
「今度お食事どうですかって!!何着ていけばいいかしら!?」
「相手の方は独身なんでしょうね??」
「奥さまに先立たれて、ガールフレンドもいらっしゃるみたいよ??だから大丈夫!!」
呆れた。
「……ただの遊び人じゃないですか、お母さん。気を付けた方がいいですよ。心配だから付き合います」