「シンちゃ~ん!!ただいまあ」


―――夜。
帰宅して部屋に入ると、人体骨格模型のシンちゃんを抱き締める。


「ごめんね!?寂しかったよね??」


いよいよ頭のおかしい人になりつつあるなと思いつつも、温もりすらあるはずもないそれに頬擦りする。


―――暖かい手。
柔らかい唇。
厚い胸板。


歯並び以外で、初めて興味を持ってしまった、生身の異性。


―――けれど。
私には縁のない、異性という存在。
ましてや雲より上の人。いや、例えがおかしい。まだ生きてる。


ぶるぶるっと首を振り、ぱんぱんと頬を叩くと、自分に言い聞かせる。


「明日からまた、新しい職場で頑張らなくちゃ!!」


と、


「文李、ちょっといい??」


襖がノックされ、お母さんがこっそりと覗く。


「はい」


「隠したくないから、文李には言っておきたくて。お茶のみ彼氏ができたの」


「かれし!?再婚するの!?」