「…シンちゃんって、誰だよ…くそ。マサトとかいう奴とも仲良さげに腕なんか組みやがって…」


「よろしいですか??社長??」


ノックして入ってきたのは秘書の蓮川真弥(ハスカワ マヤ)だ。


濃紺のスーツをピシッと着こなし、髪を後ろで夜会巻きに纏め、黒いフレームの横長眼鏡を掛けかけ直しながらピンヒールをコツコツ鳴らしてデスクに近寄る。


仕事の出来そうな、スリムな美人だ。


「何だ」


「午後からインターネットによる、ニューヨークのプリンスとイベント企画の最終の打ち合わせが入っておりますが」


「ああ、……そうだったな」


ダメだ。
やる気が出ない。