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28階の1フロア。
IT企業、[Office MANABE]。


微かにストライプの入ったダークグレーのブランドの、オーダーメイドスーツに身を包んだ真部。


社長室で代表取締役のデスクでパソコンに向かってはいるものの途方に暮れていた。


何も手に付かない。
何をしても頭に入らない。


海外からのメールのチェック。
事業部からの株の変動の連絡と確認の書類。
取引先との電話でのアポの最終確認。


ここでの仕事も少なくない。


口元で手を組み合わせ肘をついて眉間に皺を寄せ。けれど頭を占めるのは仕事のことではなかった。


どうしても気になる。
引っ掛かる。


「……婚約者だ…!?何の話だ」


あれから[DENTALCLINIC Office KAYANO]に行ってみたが、姉らしい女性に会うこともままならなければ、必ず無関係の担当のクリーニングになる。


―――避けられている。
こんなことは初めてだ。


当たり前のように女と遊び、当たり前のように別れてきた。
もちろん篩に掛けるのは自分の意思で火遊びだ。


―――それなのに。