***


―――真部は自分を恨んだ。
どうしてこんなことに。


セキュリティは万全だ。
ビルの雇用者、利用客の安全を鑑みて、外部からの不審者、侵入者は警備員が止める。


万が一にも危険人物が侵入してもおいそれとは中までは入れないようにしてある。


ただ。
内部で起きた火災に関しては、もちろんスプリンクラーの設置作動は施してある。


誤作動、もしくは故障で、作動しなかったか、あるいは作動しない状況なのか。


この状況では何もわからない。
ただ。


―――文李を死なせるわけにはいかない。
こんなところで。


「くそっ!!」


タッチパネルのセンサーも反応しない。
スマホも圏外だった。


もどかしく壁を叩く真部。
煙は容赦なくじわじわと広がる。


「誰か!!助けてくれ…っごほっ!!」


まずい。
少し煙が入った。


「……死なせねえ、こんなところで、絶対に…」


文李を抱き締めてうずくまった。