診察部屋のカーテンを開けると、そこにいたのは初日にエレベーターですれ違った、インテリ眼鏡のお兄さんだった。
「あっ、その節は…」
リクライニングになったままの診察台で、気配に気付いてこちらを見ると、目を細める。
視力は弱そうだけれど、細められた目さえ見惚れるほどの、整った顔立ちのイケメンだ。
この目で見詰められたら落ちるんだろうな。
「…君でしたか」
「失礼します。担当を代わります」
一礼して入った。
「君には気の毒ですが、彼は――斎は君のような一般人の手の届く人間ではないんですよ」
「……解ってますから。口を開けてください。磨いていきます」
歯石は元より着いていない。
色素汚れも見当たらない。こまめにクリーニングされているのが分かる、綺麗な歯だ。
「……きれいですね、歯並び」
ナチュラルなのに、人体模型並みだ。
ヤバい。別の意味でドキドキする。あの人の次くらいに綺麗な歯だ。