時間が止まったかのように、動けなくなっていた。
驚いた顔で真部さんもこっちを見ている。


栗色の艶々のロングヘアを肩の横に垂らした、睫毛の長い大きな瞳の目。顔立ちのはっきりした色白美人。


スタイルも抜群で、胸元の大きく開いた真っ赤なイブニングドレスを着こなした、ただでさえ長身に10㎝はありそうな白いピンヒール。


白いファーを纏って、真部さんに話し掛ける。


「知り合い??」


きっとさっき話していた婚約者さんだ。
そう思ったとき、涙が溢れた。


もう会えないかもしれないと。
会えなくて当たり前の人を。


そして何より、仮に再会できたとしても私なんかとても手の届かない、届くはずのない人。


それなのに。
こんなタイミングで。


一番見られたくないタイミングで。一番見たくないタイミングで。


「…………う…」


何も考えられなくなっていた。
私は何をしたのか。


そんなことをするなんて。