「これは…」


ついまた、なんじゃこりゃあ、と出掛けて口をつぐんだ。


扉の開いた先には、小さな民家一軒分くらいの高級そうな柄のふかふかの絨毯敷きのフロア。


高い高い天井。両サイドにも白い壁と同化した扉。均等に設置されたお洒落なランブタイプの照明。


天井には当たり前のようにシャンデリア。
扉の前にはおそらく専門のドアボーイさんが2人。


「ご苦労様」


「いらっしゃいませ」


笑顔で軽く会釈した叶多さんの顔を見ると、扉が開く。


観音開きされた先には、白いクロスの掛けられたテーブル。その中央にはキャンドルが立てて飾られている。


夜景が。
巨大な一枚ガラス一面の夜景が。


「………すごい」


初めて見た。
宝石箱をひっくり返したようなとはよく言ったもんだな、と。


適当な言葉が浮かばないまま、ただ見惚れた。


―――そして、
出来ることなら隣に居て欲しかったのは。


気が付いたら涙が頬を伝っていた。