やっぱりエレベーターから静かだ。必要最低限の音しかしない。
何なら微かにクラシックが聞こえる。


「えっ!?えっ!?」


叶多さんがトレンチコートの内ポケットから出した、カードキーをエレベーターのセンサーの位置にかざす。


と、ポン、と音がして、どこかの階に着いた。
奥の、反対側の壁が開いた。


クリニックのフロアの階はふたつのエレベーターがあった。


そして片方のエレベーターは途中階で別の階のフロアのエレベーターと繋がっているようだった。


1階に降りたと思ったけれど、中2階だったようだ。もうひとつのエレベーターホールに着いたようだ。


天井には豪華なシャンデリア。けれど向こうのエレベーターホールより微かに暗い気がした。


「ここから上のレストランに行けます。文李さんお酒は??」


「少しだけ……って、飲みに行くんですか!?この格好で!?」


言った私の胸元に、大判のスカーフが巻かれた。明らかに女性ものだ。


「これで大丈夫でしょう」


「………っ」


この人は、一体何者なの!?
頭が真っ白になる。