間接照明もあって、心持ち薄暗い。血を見ることもないだろうけれど、施術後に落ち着くようにするためだろう。


「ご存知なかったんですか??このビルのオーナー一族で、近い将来、海外にも姉妹ビルを建てて、そちらで経営なさるとか。そこはあくまで噂ですけどね」


ともすれば、すぐにでも海外に行ってしまうのか。


―――そうなったら二度と会うこともないんだろうな。


そう思ったとき。
なんだろう。
胸がキュン、となった。


「このビルにあるIT企業の社長という肩書きもあって、気まぐれに視察がてらこのビルに遊びに来られて、細かい不備をチェックしたり、身分を明かさず貴女のような新参者に声を掛けるとか」


言いながらも呼び出しがないか気を配っている。


入り口のセンサーが、休憩室にも来院を知らせる仕組みになっている。


各自の好きな曲のオルゴールが合図で、指名であればメロディが鳴る仕組みだ。