歯垢を見るために口を開けてもらう。歯と歯茎の状態を見て、必要であれば削らなくてはいけない。


どんなにきれいに磨いているつもりの人でも磨き残しや苦手な場所はあるし、歯間は意外と残りやすい。


口から心臓が出そうで、思わずごくりと喉が鳴る。


「めめ、目を、目を、閉じてくださいませんか??」


「なぜ」


大きくきれいな瞳で、真っ直ぐに見つめられる。


「治療、いや、磨きにくいです、から」


タオルを被せない美容院のシャンプー台や歯医者の治療で、目を見開いてなんなら上目使いにガン見する人がいると聞いたことはある。


非常にやりにくい。
必要以上に緊張するし、できれば閉じて委ねてくれた方が助かる。


「お前を見ていたい」


「はっ……???」


ヤバい。
ヤバいヤバいヤバい!!


撃ち抜かれた!!
あああああ!!


なんだこれは!?
なんだこの甘いセリフは!?


診察台の上で手を引かれ、髪を持たれ。
付けたマスクを顎にずらされ。


ゆっくりと顔が近付く。
また、唇が、重なった。


―――震えが。止まらない。