「捕まえて!!泥棒ですっ!!」


エレベーターの外の通路で、床にへたりこんだ女性が男性を指して叫んだ。


「はっ!?」


ポカンとする私。
そんなばかな。セキュリティは万全のはずだ。


そして真部さんは、私に触れかけた男性の手を掴み、エレベーターの中できれいな背負い投げをした。


「非常ボタンを押せ!!」


「えっ!?あっ!?はい……」


訳が分からないまま、キョロキョロする。


けれどもちろん、エレベーターの中にも防犯カメラが設置されていて、即座に異常を感知してそのまま止まってライトが切り替わった。


一瞬の出来事に、呆然と立ち尽くしてしまった。